まずい顔

忙しくて忙しくて、もう忙しくて、
カメラを持ち歩いて野ネコをとってはいるものの、
野ネコに頭のなかを割く時間がとれなくて、
ネコってものが、
いかに心の余裕と関連しているかを思い知る今日このごろ。

このネコは、神田で出会ったネコなのだけど、
今度ちゃんと外の写真ものせようと思っている・・・・・・

が、忙しいなかで食べたカレーと、
そのカレーのあまりの不味さ、
というできごとが、
この顔によって、鮮明に喚起されたので、
久しぶりの記念にあげておこうかと思う。



メモ…カレーは裏切らないって言葉を信じて生きてたのだが、
今日、食べたカレー屋のはひどか った。
おかゆみたいなごはんに薄いカレー色の汁。
憤死しそうになったが店主の顔が怖く て完食した。
このネコの顔みたら、なんか思い出してしまった。

不思議の国の野ネコ

ん？　なんか動いた。
通りすぎて、また戻り、確認。

ネコである。
人家の玄関から、まっすぐ私に向かって歩いてくる。

視線をこちらに向け、真剣な顔で、
ずんずんと歩いてくる。
初めて通る道、当然知らぬお宅、知らぬネコ。
なぜそんな顔をして私を見つめるのか、検討もつかない。
私は、けんかを売られているのだろうか？
いつものごとく、ネコを見つけた瞬間、
しゃがんでコンデジを構えているわけなので、
このネコは腹を立てているのかもしれない。
に、にしても、にらみすぎじゃないか、キミ！？

止まった！
急に止まった。
そしてこの顔、この睨み。
なんなんだ、一体！
このままお互いに数秒フリーズである。
こちらも引きませんよ。そんな顔したって！
私はしゃがんだまま、ネコを見返した。

するとネコは回れ右？
引き返すのかとおもいきや、
大きな植木鉢のほうへ歩いて行く。

えー私、このネコに勝ったのかしら？
ネコは植木鉢の向こう側で、頭を一段下げた。

ん、それとも・・・・・・
アリス・イン・ワンダーランド！
植木鉢の向こうには秘密の穴でも開いていて、
不思議の国に通じていたりして。
私、このネコに誘われちゃっていたりする！？
「わー大変だ大変だー！　
時間がない！時間がない！　
お茶会に遅刻しちゃうよー」

ほらね、振り返ってこちらを見たでしょ！


あれ……？
地面を嗅いでは、くるり→睨み。
地面を嗅いでは、くるり→睨み。
２度ほど繰り返した。



これはうんこさんかな。
いや小のほうかしら。

このネコ、まっすぐトイレスポットに出向いたところで、
私と鉢合わせ。
排泄欲求と、不審者への不安とのせめぎあいにより、
あんな怖い顔をしていたのだよね。

となると、このネコは野ネコじゃなくて、
このお宅の飼いネコなのかもしれないなぁ。
ここで排泄するっていうのが、
はっきり決まっているのだろう。

不思議の国への誘いを
正しく翻訳するとこうだ。

「わー大変だ大変だー！　
時間がない！時間がない！　
トイレ間に合わないよお」

ジョニー・デップの帽子屋に会えず、
残念だったわ。

タグ：野ネコ 野良ネコ ネコ

バイリンガルクロちゃん

黒さっていうのはすごいと思う。
白ネコだと気づける薄明かり。
黒ネコはどこにいるかわからなくなる。
ネコが通る、というより、影が動く。

この夜は、いつもの道から１本ずれた、
電灯の少ない道を歩いていた。

あれ、なんか、いま来た？

まあたいていネコなんだけど、
私はふだんハクビシンも探しているので、
ちょっとドキンとする。
影が電柱の下までやってきたとき、
それが黒ネコだとわかった。

この一角に黒ネコがいることは、以前から知っている。
さらにこのネコが、近所のおばあちゃんから、
「クロちゃん」と呼ばれていることも。

真夜中にたいへん怪しいのだが、
一眼レフをかまえて、黒ネコを撮ろうと近づいた。

黒ネコにしてみれば、
ふだんなら気付かれない場所で
深い時間にへんな奴がなにか構えてるんだから、
とりあえず逃げようと思うのだろう。

黒ネコは来た道を戻ろうと、向きをかえて歩き出す。
再び黒ネコが暗闇へ。
ピントなんてあわせようもない。

角の電灯の明かりでまた姿があらわれる。
お、そこを曲がるのね？
ああ待って待って、待って、待って待って待ってっ
「クロちゃん！！」

思わず声に出してしまった、午前１時……。
薄明かりのなか黒ネコは立ち止まり、
はっきりと声の主（私）のほうに顔を向けた。

神様が通ったようなシンとした瞬間。
私のカメラのレンズと黒ネコの目があった。

……じゃ。


黒ネコは、くるりと向きかえし、
再び闇に溶けていった。

ああいっちゃったあ。

クロって名前、
あのネコはしっかり認識しているんだな。

ネコ同士では、名をつけて、それを音声で呼び合うことなどない。
そもそもそんなに頻繁に音声でコミュニケーションをとらない。

私は、あの黒ネコに以前もあったことがある。
でも、名前を呼ぶのははじめてだ。

黒ネコは、いつも名を呼ぶおばあちゃんではない、
「私」に呼ばれても、「自分が呼ばれた」とわかるわけだ。

これってちょっとすごいことじゃないかしら。

私の発した「音」に対して反応したのか、
私の気持ち（殺気？）に対して反応したのか。
次にあのネコにあったときには、
実験してみよう。

１　母音だけで「UOちゃん」と呼んでみる！
２　「三郎くん」とか、まったく違う名前を呼んでみる！
３　声には出さず、心のなかで強く「クロちゃん」と叫んでみる！

どうだろ、この実験。
１，２なら振り向きそうだ。
３ができたらエスパーだ！　
アニマルコミュニケーターっていうのになれるかも。

いや、違うか。
３が成立したら、私じゃなくて黒ネコのほうがエスパー。
シックスセンス、獣能力が高いということだ。

ま、エスパーかどうかは置いておいて、
黒ネコクロちゃんは社会を持っている。
ネコだけじゃない。ヒトも含まれた社会。
ヒトを無視しては生きられない社会で生きている。

それだけ近所のヒトたちは、
ネコをかわいがってるんだろうなぁ。

だから、私のことを無視しなかった。

野ネコはネコ社会で生きているから、
単独飼いペットネコよりは、ネコ語が堪能。

さらにこの黒ネコのように
地域ネコとしての役割も負っていたりすると……
案外、ヒト語も理解しているんじゃないかなぁ。

愛されている野ネコは、
ネコ語とヒト語のバイリンガルなのかもね。

再会したときは３つの実験を必ずやってみよう！

タグ：野ネコ ネコ 野良ネコ

ロミオと三毛ネコジュリエット

深夜、以前小悪魔クロネコとの邂逅があった
コンビニを通りかかった。
やはり餌場のようで、クロネコの姿はないが、
トレイに入れられたカリカリが置かれていた。
いろいろなネコがやってくるのだろう、と思いながら、
路地をのぞく。

あらどうも！　調度よくいらっしゃいました三毛ネコ三毛子さん。
ちょっと細身、毛並みもツヤツヤで、若い女の子。
おしりも確認したけど、睾丸はなかった。
そもそも三毛のような３色そろうネコは、
遺伝の理論上オスが生まれない（まれに出ることもある）。
黒とか茶の有色の遺伝子と、染色体XとYの話なのだが、
詳しくはこのP１７６に載ってます。


いつもお世話になってるリコー先生は、
暗闇でシャッター切れないし、ジーカシャリと考えすぎてネコを追えない。
そこで最近、値下がり中のシロカシオを購入した。

よっしゃ、フラッシュたいて写真とっちゃおう。
三毛子さん、逃げるかしら・・・・・・と近づくと、あら拍子抜け。

足にまとわりついてきた！　三毛子、ご近所さんたちに小さい頃から可愛がられてるんだろうなぁ。
嬉しくなっちゃって、寒空の深夜にもかかわらず、地べたにしゃがみこんでしまった。

かわええのお～おぼこいかおしてるの～
どこの悪代官だって感じだが、胸ドキで震える手を差し出したりしてみると……

グルグルグルグル。喉鳴らしちゃって、まったくもう！！！！かわいいぞっ！

野ネコでも、たまーに親しげにしてくれるネコに出会う。
基本相手にしてくれないものだと思っているから、こんなネコに出会うとノックアウトだ。
ナンパしてかわいい子とお茶できてラッキー！　ってこんな気持なのかな。

このエリアはヒトがつねに餌をあげているようだから、
ヒトに対する警戒心が薄いのだろう。
そして三毛子は、すでにカリカリを食べておなかも満ちているのだろうな。

うふふ、うふふ、といい気分で三毛子をなでていたのだけど、
三毛子は落ち着かない様子。なにかを気にしている。ん？

耳の方向？　ん？？？　
ぷつりと大通りを通る車の音が止む瞬間がある。
ミャーオ　　　　　ミャーオ　　　　ミャーオ

どこ？　ネコ？　ミャーオ　

どこ？　ネコ？　ミャーオ　
私もつられて、スロープのぞきこんでみたのだけど、
どう考えてもネコの顔幅より狭い。ゆえに、ネコの入る余地がない。
三毛子、ここじゃないみたいだよ。

ここ？　
いや遠いって、そっちは。
あら、そうかしら？　ん～


とりあえずマーキングマーキング。

違うの？
違うって、そっちじゃないよ。

どこかしら？　グルグルグルグル。

ここかしら？

ちょっと離れては首を傾げ……

再び戻り音源を確認。

私は私で鳴き声の出処を探ってみた。
三毛子の指摘するように、シャッターの向こうにネコがいるようだ。
ミャーオ　　　ミャーオ　　とかわいらしい声で鳴いている。
これが何のアピールなのか？　イマイチわからない。
三毛子はその周囲を歩きまわって、グルグルいいながら、あちこちにマーキングを繰り返す。
そして離れたり、近づいたりして、頭を傾け、両耳で鳴き声の位置をはかっている。

そして最終的にシャッターの向こうのネコを特定した。
これは……発情しているのかしら？
だとしたら、ロミジュリ？？？　
三毛子はじつはジュリエットで、
シャッターの向こうにいるのはロミオなの？

イエネコの秋の繁殖期は１０月くらいなので、
ちょっとずれてるよなぁ。
何関係？　三毛子の単なる友達なのかしら？

道路に完全に腰を落とし、そんなこと考えながら三毛子を見てたら、
すっかり冷えきってしまった。
さて、帰って一眠りしなければ！　と立ち上がると、かわいい三毛子、お見送りをしてくれるようす。
あら、帰っちゃうの～？



ごろごろにゃん。
うわぁ、私がロミオなら、たまらんポーズだろうね。

シロカシオのフラッシュがばっちり活躍してくれて、
三毛子のタペタムも反射しまくり、化け猫のような写真だけど、
超かわいい野ネコだったわ。
サンキュー三毛子。
ロミオとあえるといいね！

タグ：野ネコ ネコ ノラネコ

コンビニ前できょとん顔

眺める、を、観察、にかえるには、
カメラを持ち、記録に残そうとすること。
この「そうとする」が大事で、
「そうとしない」でいると、
目が流れていく。

野ネコを見つければ、目で追うのだが、
野ネコを見なおすには、やっぱりカメラがいるよな。
iPhoneじゃなくて、ちゃんとしたズームのカメラ。
野ネコには距離が必要だから、望遠レンズがいるよな。

なんどかこれまでも試みたのだけど、
カメラを持つ、っていうところで挫折しちゃう。

だってやっぱり重いし、面倒なんだもの。

ノネコノオトをはじめたのは、
「そうとする」気持ちをキープするため。
ついでに資料写真をストックするため。

不思議なもので、そうやってカメラを持ち始めると、
なんとなくの風景に「野ネコ」が引っかかってくる。

じゃん！



深夜、深い深い時間帯、
ふだん通らない道を通ったら、
コンビニの前に黒いモノがちょこん！

野ネコいないでしょ、ふつうこんなところに。
おどおどした気配もなし。
首輪でもついているのかと、近寄ってみた。



首輪、してないぞ。
クロネコの脇を、ひとり、ふたり、コンビニを出入りする人が通り抜ける。
でも逃げない。
私は、視線をはずし、腰を落としてにじにじにじ、
とにじりよる。
ギー・・・カシャリ（RICOHの音）



にゃんですか？（きょとん）

ビビョー（美猫）。
被毛の先がフワッフワッ、瞳のまわりはゴールド。
典型的なハロウィンタイプのクロネコだ。

深夜コンビニの前にしゃがみこみ、
ハロウィンネコにきょとんとされている私。

ひいた図を想像すると、自分がちょっとオカシなヒトだというのは、
容易に想像できるのだが・・・・・・
このきょとん顔め！
かわいいじゃないか！　
きょとんネコめ！！！！

ん、でもさ、なんであんた、
逃げないでそこにいるわけ？
クロネコに、立ち去ろうという様子は一切ない。
私は、えっこらしょと立ち上がり、
お別れにもう一枚、ジーカシャリ。



立ち上がってようやく気がついたよ。
クロネコの背後にまかれたカリカリの存在！
誰かがここに餌をまいていったんだ。
餌場なのかな。
クロネコは、ヒトがみんないなくなったら、
このカリカリをひとりで食べるつもりなのだ。

ほかの野ネコにとられてニャルまいぞ！

あのきょとん顔は、かわいこアピールではなくて、
あなた、背後のカリカリの存在に気づかないでちょうだいよ、
っていう顔だったのかもね。

立ち去りながらも、なんどか振り返ったのだが、
クロネコはそのままの姿勢で、
じっとコンビニの前に座っておりましたとさ。



＊＊あとから気づいたこと＊＊

これね、私が近寄っていくときの途中の写真。
クロネコってば、あきらかに後ろを気にしている。



私がどんどん近づいて、
正面にやってきたときには
クロネコは内心・・・・・・

やっべ、カリカリに気づかれたんじゃね！！！！！（驚＆汗）

という気持ちだったんだろう。
心を鷲掴みにされたあのおすましきょとん顔だが、
よく見たら、目もクワァと見開いて、耳も横向いている。

ややべっ、
あは、
あはは、
どうもー
うふふふ・・・（驚＆汗）

ドギマギなつくり笑いといったところかしら。
ああ、おぢさんってば、
すっかりこのかわいい小悪魔顔に
騙されちゃったよ・・・・・・反省反省。

タグ：野ネコ ネコ 東京

ときめきのボスネコ

石屋さんの側にいた野ネコさま。
ずとん、と、登場。



目があってもそむけない。
ふってぶてしい顔。
丸くて、でかくて、偉そう。
ボスネコ！？
鼻の横の深い切り込み傷は、
ネコパンチ合戦での痛手か。

おまえ、にゃんじゃい
見んじゃにゃーだよ



腰がひかない。高くして、真正面から向かってくる。

おお、ボスネコ～！

私がもし同サイズの野ネコなら、ひるむね。
道も開けるよ。
ドキドキして
毛づくろいでもしちゃうだろうよ。

でも私はニンゲンだから、ひるまず
ヤッホーボスネコ！　と、
しゃがんでカシャカシャシャッター切った。

耳、耳、左耳だけ
そっぽを向いた。


黒のこっちにむけんな、へんてこニンゲン。


ちょっと怒ってるっぽい。困ってるっぽい。

不愉快そうな男子中学生のようなボスネコに
ややときめいているあいだに、
身をひるがえし、石屋さんの奥へと、
消えてしまいました～。

アデュー！ボスネコ

タグ：ノネコ ネコ 野ネコ

屋根の上の黒ブチ美人

秋の日曜日の夕暮れどき。
目白あたりの坂道をのぼっていったら、
屋根の上に野ネコの黒ブチがいた。
暗くなると野ネコがいても、オートでシャッターがおりない。
幸い黒ブチは電灯のもとで毛づくろいしていた。

私は、野ネコを見つけると、まずナオと鳴く。
挨拶のナオ。
短く、やあ！　くらいの感じで。
これを長年、野ネコに会うたびにやっているからうまくなる。

たいてい野ネコはビクッとして動きを止める。
ネコは単独性の動物だ。
おとなになればひとりで過ごす。
繁殖期でもない限り、音声コミュニケーションはあまりとらない。
ネコ同士の存在は、においと気配とで察知しあう。

なのに、声だけが近くで聞こえるのだから、
野ネコにとっておかしな事態なのだ。

次に、声の方に顔をやり、様子を伺う。

これは、黒ブチの、まさに、そのときの顔。



警戒心といくつかの迷いが混在したような野ネコの顔が好きだ。
この黒ブチ、体が細身。
被毛が美しく、白いところが白のまま。若い。
しなやかで色っぽい。メスだろうか。

黒ブチは、そこにネコが居らず、
視線を送る私の姿だけ認める。

なんだニンゲンか。



ここまではこられないことも知っている。
高いところにいるほうが、優位にも立てる。

緊張が少しだけとけて、
逆立った背の被毛がなめらかに落ち着き、
ヒゲが少し下がってきた。

で、どうするんだろう、このニンゲンは？

初対面の野ネコには近づけない距離がある。
野ネコは、それをいつも測っている。

行こうか、それとも、とどまろうか。

ごめんね、ありがと、と
塀から離れてお別れした。

美人との一瞬の出会いで幸せな晩だった。

タグ：野ネコ ネコ 東京