SSブログ

バイリンガルクロちゃん [東京の野ネコ]

黒さっていうのはすごいと思う。
白ネコだと気づける薄明かり。
黒ネコはどこにいるかわからなくなる。
ネコが通る、というより、影が動く。

この夜は、いつもの道から1本ずれた、
電灯の少ない道を歩いていた。

あれ、なんか、いま来た?

まあたいていネコなんだけど、
私はふだんハクビシンも探しているので、
ちょっとドキンとする。
影が電柱の下までやってきたとき、
それが黒ネコだとわかった。

この一角に黒ネコがいることは、以前から知っている。
さらにこのネコが、近所のおばあちゃんから、
「クロちゃん」と呼ばれていることも。

真夜中にたいへん怪しいのだが、
一眼レフをかまえて、黒ネコを撮ろうと近づいた。

黒ネコにしてみれば、
ふだんなら気付かれない場所で
深い時間にへんな奴がなにか構えてるんだから、
とりあえず逃げようと思うのだろう。

黒ネコは来た道を戻ろうと、向きをかえて歩き出す。
再び黒ネコが暗闇へ。
ピントなんてあわせようもない。

角の電灯の明かりでまた姿があらわれる。
お、そこを曲がるのね?
ああ待って待って、待って、待って待って待ってっ
「クロちゃん!!」
新宿 クロちゃん
思わず声に出してしまった、午前1時……。
薄明かりのなか黒ネコは立ち止まり、
はっきりと声の主(私)のほうに顔を向けた。

神様が通ったようなシンとした瞬間。
私のカメラのレンズと黒ネコの目があった。

……じゃ。

新宿 クロちゃん
黒ネコは、くるりと向きかえし、
再び闇に溶けていった。

ああいっちゃったあ。

クロって名前、
あのネコはしっかり認識しているんだな。

ネコ同士では、名をつけて、それを音声で呼び合うことなどない。
そもそもそんなに頻繁に音声でコミュニケーションをとらない。

私は、あの黒ネコに以前もあったことがある。
でも、名前を呼ぶのははじめてだ。

黒ネコは、いつも名を呼ぶおばあちゃんではない、
「私」に呼ばれても、「自分が呼ばれた」とわかるわけだ。

これってちょっとすごいことじゃないかしら。

私の発した「音」に対して反応したのか、
私の気持ち(殺気?)に対して反応したのか。
次にあのネコにあったときには、
実験してみよう。

1 母音だけで「UOちゃん」と呼んでみる!
2 「三郎くん」とか、まったく違う名前を呼んでみる!
3 声には出さず、心のなかで強く「クロちゃん」と叫んでみる!

どうだろ、この実験。
1,2なら振り向きそうだ。
3ができたらエスパーだ! 
アニマルコミュニケーターっていうのになれるかも。

いや、違うか。
3が成立したら、私じゃなくて黒ネコのほうがエスパー。
シックスセンス、獣能力が高いということだ。

ま、エスパーかどうかは置いておいて、
黒ネコクロちゃんは社会を持っている。
ネコだけじゃない。ヒトも含まれた社会。
ヒトを無視しては生きられない社会で生きている。

それだけ近所のヒトたちは、
ネコをかわいがってるんだろうなぁ。

だから、私のことを無視しなかった。

野ネコはネコ社会で生きているから、
単独飼いペットネコよりは、ネコ語が堪能。

さらにこの黒ネコのように
地域ネコとしての役割も負っていたりすると……
案外、ヒト語も理解しているんじゃないかなぁ。

愛されている野ネコは、
ネコ語とヒト語のバイリンガルなのかもね。

再会したときは3つの実験を必ずやってみよう!
nice!(0) 
共通テーマ:ペット

nice! 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。